実数は自然数よりも「濃ゆい」 その2

自然数と実数の濃度

 さて「その1」の続きで、「実数全体の集合と、自然数全体の集合では、どちらが大きいか」を検討してみましょう。
 結論から言うと、タイトルの通りです。「実数のほうが濃度が大きい」のです。「いやいや、自然数も実数も無限なのだから、自然数と偶数の時と同じように、いくらでも対応させることが出来るのでは?」とお思いかもしれませんが、それが出来ないのです。何故そういえるのでしょうか?
 では、上の命題を、背理法で証明してみましょう。「自然数と実数の濃度が等しい」と仮定して、矛盾が生じれば、「濃度は等しくない」ことがわかります。
 「自然数と実数の濃度が等しい」と仮定したので、自然数と偶数の時のように、「自然数と実数のペアが作れて、もれなく、一対一に対応する」はずです。以下の表のように、てけとーに当てはめていきます。

自然数 実数
1 3.54824…
2 0.70637…
3 8.33465…
4 2.18019…
5 1.34273…

 ここで「矛盾」とは、すなわち「どんなペアを作っても、必ずそれにもれる実数Xが存在する」ということです。上の表に絶対に出てこない実数Xが存在するのです。では、そのようなXを見つけるにはどうしたらいいでしょうか?ここで、上のエントリ「もともと特別なonly one」の発想を使います。上の表に出てきている実数それぞれと、ちょっとずつ違えば、それがXです。そういう数を作ってみましょう。下の表は、上の表において、自然数nとペアになっている*1実数の小数第n位を赤く強調したものです。そこに注目して下さい。

自然数 実数
1 3.54824…
2 0.70637…
3 8.33465…
4 2.18019…
5 1.34273

 そして、小数第n位の数字が、自然数nとペアになっている実数のそれとは異なるような、数字を作ります。たとえば、
X=4.23578…
とでもしてみましょう。すると、このXは、自然数1とペアになっている実数とは小数第1位が異なっていますし、自然数2とペアになっている実数とは小数第2位が異なっています。同様にして、Xの小数第n位は、表の上からn番目の実数とは異なるので、Xは表に載っているどのような実数とも異なる数です
 つまり、Xは表からもれた実数です。よって「自然数と実数のペアが作れて、もれなく、一対一に対応する」という仮定と矛盾します。
 したがって、自然数全体の濃度よりも、実数全体の濃度のほうが大きいことが証明されました。このような集合を、数え上げができない、という意味で「非可算無限集合といいます。
 ちなみに、上のように、実数の「対角線」上の桁をちょっとずつ変えることによって、非可算な集合の存在を証明する手法を対角線論法といいます。カントールさんが考えたそうです。

結論

  • 無限にも、いろんな無限がある。
  • こんな証明方法を考えつくカントールはスゴい。

この2点の感動を伝えたくて記事を書きました。特に「その2」は多少ゴチャついた感がありますが、少しでも伝わったでしょうか。

*1:つまり、上からn番目の