「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ/谷岡一郎/評価:4


 著者は「世の中のいわゆる「社会調査」の過半数がゴミである」と断じた上で、こうした「ゴミ」に騙されないよう警鐘を鳴らします。まず官公庁やマスコミ、研究者によって生産されるおかしな「社会調査」を紹介し、「ゴミ」に対する防衛策として、社会調査の手法とその過程で生じる種々のバイアスを説明した上で、こうした「ゴミ」が生まれないような情報を流す側へのチェック体制の構築と、情報を受け取る側のリサーチ・リテラシーの向上を喚起する、といった内容です。
 たとえば序章で取りあげられているのは、歴代のアメリカ大統領4人(カーター、レーガンニクソン、フォード)の人気調査です。結果は順に35%,22%,20%,10%となっており、新聞は「一番人気はカーター氏」として報じています。しかしこの結果は当たり前なのです。なぜでしょうか?
 答えを言ってしまうと、カーターは民主党、他3人は共和党なので、共和党支持者の票は割れるからだそうです。このように、分かってしまえばアホらしいけれども、テレビや新聞の見出しをなんとなく見ているだけで、僕らはこうした「ゴミ」調査に引っかかり、知らず知らずのうちに偏った見方をしている可能性があるわけです。




 僕個人の経験を書くと、新聞やテレビも偏った報道(右とか左とか)をしている、ということを知ったのすら高校生の時で、それまではドコも同じこと、しかも正しいことを言っているんだとばかり思っていました。
 今回読んで新しく知ってビックリしたのは、官公庁でさえも、施行された法律の実効性のアピールや認知度の向上のために、結論ありきの偏った調査をすることがある、ということです。
 情報は鵜呑みにしてはイカンなぁと、当たり前のことを再認識させられた一冊でした。